大阪市中央区杉山町−日本第二の都会のド真中、現在の大阪城ホール周辺と姿を変えているが−そこに陸軍砲兵工廠があった。当時、日本最大の兵器工場であったから、アジア最大といっても過言ではない。ところが昭和20年8月14日、終戦宣言発布の一日前、白昼のすさまじい攻撃により壊滅。後には356,500坪のガレキの荒野は、戦後、賠償指定物件となりアメリカ軍に接収され、使用可能な兵器と機械、資材は処理された。その後、昭和27年講和条約の発行により返還されたが、そこには尚、膨大な量の鉄が残された。朝鮮戦争が始まると、鉄の値段はトン当り3万円から10万円に達したことがあり、全国の都会のめぼしい川には「川太郎(がたろう)」と呼ばれる食いつめ者が、腰まで泥に浸かり鉄屑を捜しまわった。しかし杉山町の砲兵工廠跡には、地上に残っているだけで数万トン、地上には測り知れない量の鉄があったのである。いつの頃からか、砲兵工廠を望む平野川と猫間川の対岸にへばりつく、フジツボのような集落が出来た。日本、朝鮮、沖縄−国籍もさまざまなら、前科もさまざま。放っておくと赤く錆びて土と化す鉄の山を見逃すことの出来ない連中の集まりである。人呼んで“アパッチ族” 夜な夜な国有地に忍び込み、国有財産である鉄を掘り起こし、運び出し、売りさばき、ホルモンを食い、焼酎を飲み、また鉄に挑むドロボー集団。開高 健の「日本三文オペラ」は、そんなアパッチたちの奔放なエネルギーにあふれた生活と人間関係を活写した作品である。これを素材に今回上演する「日本三文オペラ 疾風馬鹿力篇」は、原作の時代設定・背景・ストーリーを重視しながら、物語の中に出てくる数々のエピソードを活用し、応用し、色づけして、人間本来の持つ魅力的なエネルギーを舞台に表現。アパッチたちの生活と人間関係に、誰もが忘れかけていた不思議なエネルギーとロマンを感じるそんな舞台に仕上がった。
これまでの上演

1986年3月 テアトロ・イン・キャビン公演 JR大阪駅前特設テント

1991年3月 FWF大テント公演 JR京橋駅前特設テント

前回公演写真